ロボットパラメータ

 

暇な男といっても、その男の場合は少し違った。 

ある会社を立ち上げる事に成功し、何をしなくても金が入ってくる、言わば遊んで暮らす毎日だった。 

今日も男は何もする事が無く、暇つぶしに広告をよんでいた所だった。男の目に、一つの広告が入ってきた。

家事から食事まで ロボットが何でもします  永久回転ロボット  \250000 

男は興味を示したようだった。永久回転という言葉に気になったが、何か永久電池の類だろうと思いながら。 

とにかく今は暇で、誰かをこき使って楽しむ娯楽も面白いとまで思っていた。 

その三日後、ロボットが来た。ごく普通の、一般に言う「ロボット」の風貌、

そして家事用のエプロンを着ていた。 

「何でもしてくれるんだろうな・・・」 

男は不気味な笑みを浮かべて言った。ロボットは頷いた。 

次の朝。男は朝飯を作れと命令をした。ロボットはただ頷き、一つの目玉焼きを作った。 

(何でもしてくれるんだよな・・・・どうせロボットだ)と男は考えた。痛めつけようと思っていた。 

「オイ、これ半熟じゃねぇだろ 作り直せよ」 

と言った。ロボットはもう一度作り直した。 

ロボットの裏側にあるパラメータが少し増えるのは、誰も見ていなかった。 

 それからと言うもの、男はやりたい放題だった。 

ある時はゴミ箱をわざと蹴り飛ばし掃除を増やしたり、またある時はわざと皿を割り掃除をさせたり、 

ロボットが少しでも弱音を吐くと 

「この役立たず!」 

と言ってこき使い、ロボットの「怒りのパラメータ」は限界寸前になっていた。

男は未だにその事を知らない。 

 そして三日後・・・ ロボットは洗濯物をたたんでいた。 

そこに男が来て、いきなり洗濯物を踏みつけてこう言った。 

「オイ。汚れてるじゃねえか 洗い直せよ」 

ロボットのパラメータがついに限界になった。ロボットの目からは光線が出て、

男は避けようと思う前に倒れた。 

 

男が目を覚ますと、倉庫のような所に立っていた。男は自分の体の異常にすぐ気付いた。

ロボットになっていたのだ。 

「俺の体がロボットに・・・!?どういう事だ・・・・クソ・・体が動かねぇ・・」 

男が悩んでいると、向こうの方から老人の声がした。 

「ハイ、ハイ・・・毎度ありがとうございます。ではまもなくお届けに参ります。」 

老人は電話を切り、男にこう言った。 

「フフフ・・仕事だよ、新入り君。おまえが今までロボットをこき使ってくれた。

 今度はおまえがこき使われるんだ」 

男は抵抗しようとしたが、もうすでに体は動かない。 

 

きっと自分もこき使われてその持ち主がロボットになるのだろう。

人が邪心を持っている限り、これは止まらない。

止める事が出来ないのだ。


これは、永久回転なのだ。